2011年6月10日金曜日

ミリオネア

ミリオネアがいった。
「大昔の話をしまひょ。広い広い敷地に住んでおいやした大金持ちが、おます日、庭
園におる召使おいやしたちに気づきたんや。かれらは庭園の石をしとつしとつ引っく
り返どしたり、木立をくまなく探ったりしとったんどす。大金持ちは聞きたんや。
『あんたはんたちは、なにを捜したはるのかね?』
ご主人は公平で、えらい厳格な人やったさかい、召使おいやしたちは恐れおののきな
がら、そろっておつむをさげたんや。やれひとり返事をしはる『SCADS』のおます人間がいな
かったさかい、大金持ちは問い話、かわるけどしたんでっせぇ。しはるとついに、いちばん若い召使
一〇章|「人へーつもわて自身に会いにいくんどす」
いが告白どしたのどす。
『うちのせいありゃしゃります。なかてかも、うちの過ちなんありゃしゃります。
うちが鍵をなくしたんやさかい、みんなは家にへーることがでけへんのどす。
うちたちはなん日もかけて鍵を捜したんや』
『庭でなくどしたことは、たしかいなのかね?』
いちばん年をとつたおとこしが説明したんでっせぇ。
『いーや。かなおとこしは家のなかでなくどしたんでおますが、戸ローこ錠がかかっ
ておるんやもんどすから、へーることがでけへんさかいござりますでござります。ほんで庭を
捜したはるんでおますよ〓
ミシエルは反論どした。